【車・趣味】今年最後の大旅行 ~犬好きオーナー夫妻のペンション~
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長野県内では、各所で積雪が観測されました。
特に日本海側に近い長野市や飯山市は一日中雪が降り、世界をすっかり銀世界へと変貌させることとなりました。
本日も一日中白い結晶が降り降りました。そう言いながら、積雪よりも明日明朝の道路が凍結していないかが気掛かりで仕方がない【やさぐれ紳士】白兎です。
皆さん、こんばんは。如何お過ごしでしょうか。
数多くのクルマたちと、オーナーたる方々と出会い、お話しし、笑顔を零しながら再会を誓ったオフ会を終えました。
思わぬ形で富士山の麓が齎す寒さで体力を奪われた私は、この日身体を休める宿を目指し愛車と共に駆け下りていきました。
辿り着いたそこで、心を癒やしてくれる思わぬ存在と邂逅するのでした。
ホテルというよりも、ペンションという呼び方が正しいその宿泊施設を運営するオーナーさんは、物静かながらも温かみのあるご夫婦でした。
通された部屋は一軒家の一室を思わせるファミリールームで、一人占めするにはとても勿体ない程。しかしながら、ビジネスホテルのようなキチッと清掃された無機質感は皆無で、海辺に向かう窓を開放すれば潮風が吹き抜ける空間が広がっていました。
部屋一杯の温もり。思えば会社絡みの出張でも個人旅行でもビジネスホテルばかりだった私には、初めてとも言える雰囲気でした。
そしてこのホテルではオーナーご夫妻が何頭も保護犬を引き取り育ててきたと仰っていました。
ホテルの紹介ページには看板犬であるゴールデンレトリバーが載っており、穏やかな表情で宿泊者をもてなしていた、そうなのですが。
病気を患い、オーナーご夫妻に優しく看取られながら天国へと旅立ったそうです。
フロントに飾られたゴールデンレトリバーの子の写真を見た瞬間、何となくではありましたが。
虹の橋を渡ってしまったのだろうか、と薄々感じていました。
それだけで感情移入した私は思わず声を震わせましたが、命あるもの、必ず終わりはある。
一日で様々な思いと感情を受け取った私は、少し疲れていました。気を紛らわせようと部屋でブログを書いていると、何やら室外から賑やかな声が聞こえてきます。
持ち込んだお酒が切れてしまったことも重なったので、思い切って部屋の扉を開けると、そこには。
御年18歳となる甲斐犬のお父さんと、その息子兄妹たちが、別の宿泊者カップルと見られる方たちと戯れていました。
動物アレルギーを持つ方を気遣い、普段はフロントから出さないようにしているとのことでしたが、問題がなければ宿泊する人たちと会わせ遊ばせているとのことでした。
イヌ科の動物に目がない私は、図らずもその空気にご一緒させていただきました。
オーナーさんにバンザイさせられるこちらの子は、毛の色が虎のように綺麗な模様が特徴な男の子です。三毛猫のように褐色と黒の毛が並ぶ甲斐犬は「虎毛犬」とも呼ばれ、珍しいと共に希少とのことでした。
性格はオーナーさんの元へ行ったかと思えば私を含めた宿泊者たちの元に来たりと忙しなく動き回る、わんぱくという言葉が相応しい元気な子です。
オーナーさんにはデレデレのようで、されるがままの姿が可愛らしい。
一方で褐色の毛並みに身を包んだこちらの子は女の子で、快活な兄(弟?)とは対照的に落ち着きがあり堂々とした振る舞いを見せていました。
一時間近くだったかと思います。
ロビーを走り回る甲斐犬の兄妹と共に、オーナーご夫妻と宿泊するカップルの方々とイヌについて語り、触れ合っていました。
以前の記事で、動物を見るのは好きでも触るのはビビリで中々触れることができなかった私も。
褐色の甲斐犬(妹)が、私の足元で佇んだ際、思わずその身体を抱き締めていました。
狩猟犬として、基本的に主にしか懐かない勇敢な甲斐犬。
その毛並みを、怖くて震えそうになる手で、優しく撫でると。
嫌がる素振りも見せず、私の手を受け入れてくれました。
イヌならではのゴワゴワとした強い毛並みの中から溢れる、温かさ。
昼間の寒さが嘘のように感じられる程の、温もり。
十二分に堪能させてもらったと思った瞬間、今度は兄妹でじゃれ合い始めました。その姿はロビーを、私たち宿泊者をホッコリとさせるには十分過ぎる程でした。
現代社会において、己の地位や利権ばかりを気にして行動する御仁が多い中。
この甲斐犬の兄妹を含めて、イヌたちはどうしてこんなにも自由でありながら。
人を癒やしてくれるのだろう。
イヌたちに対する思いを語ってくださったオーナーご夫妻、そして甲斐犬たちとの触れ合いを存分に楽しみ、忘れかけていたアルコール飲料の補充の為に自販機に立ったその時。
私の両足の合間から、茶トラ柄の兄甲斐犬君が頭をすっぽり埋めて顔を出しておりました。
「ナニナニ、何かくれるの??」と言わんばかりに、目を輝かせながら。
理性が飛びそうになる寸前でした。もう、あれです。シチュエーションが最高。
「ダメだよ?これ、お酒だから」
自販機から取り出したビール缶を手にする私を、尚見上げ尻尾を振って表情を緩ませる甲斐犬兄君。
……そんな表情なんか見せられたら、本当に何かあげたくなるじゃないか。
然れど、人間でも度が過ぎれば毒なものは毒に変わりはなく。
「……ダメ、あげられないんだ。ごめんね」
思わず顔が綻んでしまった私を尻目に、何も貰えないことを悟った甲斐犬君はしょんぼりしながらフロント奥へと帰っていくのでした。
これまで私は、ホテルは身体を休めるだけの場所。人と触れ合うこと必要性などないと信じて生きてきました。
それが一瞬にして、見知らぬ人と接することも悪くないとさえ思える夜となりました。
予想もしない出来事に出くわしながら、イヌという動物が生んでくれた人との繋がり。
この日は寝床に付くまで、綻んだ顔を元に戻すことができないまま、疲れを感じながらも心を温められた私は眠りに就くのでした。
明くる日も、これまでの旅行の中でも大旅行となる時間は続きます。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
それでは、また次回まで。