白兎と雪狼の、果てなき旅路

ドライブやドライブや写真撮影を趣味とし、その他、HSPやAセクシャル、イジメ。精神的・心理的なことについて綴っていきます。

【車・趣味】秋の新潟 ~佐渡金山遺跡、正と負の遺産~

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 10月下旬入間近にして、一気に秋から冬へと季節が加速し始めました。ここ数年は暖冬続きで気が緩んでいた感がありますが、今年は本格的な寒さと雪に注意を一層払う必要があるかもしれません。

 今朝も10℃に満たない気温に見舞われ、仕事よりも温かいお布団から抜け出す方が大変だった【やさぐれ紳士】白兎です。

 

 

 皆さん、こんばんは。如何お過ごしでしょうか。

 

 

 既に1ヶ月が経ってしまいましたが、今回は前回の続きである佐渡ヶ島の旅を綴って参ります。

 今回は世界遺産暫定リストに上がっている、佐渡金山跡について写真と共に追憶していきたいと思います。

 

 

 

 

 日本のマチュピチュ?佐渡金山跡

 

 佐渡ヶ島と言われて、真っ先に思い浮かぶのは佐渡金山ではないでしょうか。

 

 遥か昔、佐渡は大罪を犯した者の流刑地とされていました。技術と科学によって安全を確保された現代とは大きく異なり、一度流されれば生きて本土へ戻ることは死を意味していた時代もありました。

 時は進んで、江戸時代。金が年単位で数百kg、銀が数十トンという莫大な勤続が採掘されることとなりました。それが、今は佐渡金山跡とも佐渡金山遺跡とも呼ばれる鉱山でした。

 

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 当時は大量の富を得るというよりも、幕府へ献上され名声と地位を得る為に利用されたと聞くその場所。

 今は当時の面影を薄く残しながら、緑に覆われた天然の要塞とも呼べる技術の発展と自然の強さを併せ持つような、厳かさに似た雰囲気に包まれる場所となっていました。

 

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 巷で現実世界のラピュタと呼ばれるのも頷ける、静謐さの中に見るものを慄かせる壮大さとも偉大さとも思わせる空気を漂わせています。ヒトが切り開いて塹壕のような形にされても尚、跡地となったそこに芽を宿し成長した草木の力強さが入り乱れるその様。周りのツアー客の歓声にも聞こえる声が遠くに聞こえるかのように、言葉を失った私は無心でカメラのシャッターを切っていました。

 

 なんと言葉にすれば良いのか、正直今でもわかりません。

 

 ですが、一昔前にテレビで紹介され話題となった南アメリカに存在する「マチュピチュ」。ヒトが文明を残しながらも滅んだ後も、地球の緑の力強さが加わることで「天空の聖殿」と称されるその場所を、まるでこの目で見たかような錯覚に陥ることとなりました。

 

 元々は自然の山肌だったものが、ヒトの手による発破や開拓によって姿を表すこととなった天然の金山。

 それが数世紀の時を経て、地球の意志とも呼べる草木に覆われても、尚朽ち果てた様子もなく。

 寧ろ、共存しているかのようでした。

 

 

 北沢浮遊選鉱場跡とも呼称される、美しさと侘しさ漂う情景

 

  晴れ渡っていた空は、いつの間にか雲に覆われていました。奇しくもそれは、私たちの到着を待ち望んでいたかのようにも思えました。

 青空の下であれば人工物と自然が絶妙に混ざりあった綺麗で不思議な場所、と言えたかもしれませんが。

 雨が振りそうな灰色の空に映る北沢浮遊選鉱場跡は、一層侘しさのような雰囲気を醸し出すこととなりました。

 

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 朽ちることなく形を残す、コンクリート。火力発電所としてかどうしていた場所のようですが、ここがどれだけ重要で貴重な要所だったかを思い知らせるかのように、強固な造りをしているのかを見せつけていました。

 

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 補修はあるとしても、ほとんど当時の面影を残すかのよう。仮に一人で入れ、と言われても、ちょっと怖いです。

 

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 古代のコロッセオのような建造物。


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 詳細を調べていない為、それぞれがどのような役割を担っていたかもわからない構築物が点在していました。ここでの自由時間は30分足らずと短い時間でしたが、この地に立ち、情景を見て、静けさに浸るだけで多くのことを考えさせられることとなりました。

 歴史は、表向きには輝かしい部分ばかりが記録として残され、後世に語り継がれることが多くあります。

 しかし、その裏には必ず個々人単位での思いや思惑、そしてとても語ることのできない負の部分があったのだと思います。

 この身で立ち、この目で見て、この耳で聞かなければ決して感じられないもの。上手く言葉にできないことも然ることながら、語り継いではならない事実もあることを感じる、そんな一時でした。

 

 

 炭鉱内を、この足で歩く

 

 緑に溢れる場から離れ、次は炭鉱内を実際に歩く時間が設けられました。

 佐渡金山遺跡の坑内は、江戸時代の主に人海戦術とも言える人手を掛けて掘り進んだ箇所。もう一つは明治に入り機械が導入された頃の箇所を巡るという、二つのコースが用意されていました。

 

 人の手で切り拓いた道と、機械産業の発展で切り拓いた道か。

 私たちはメカメカしいもの好きということ、そしてリアルな人形が展示されているという江戸時代コースは気味が悪そうということで、明治時代コースを選択しました。

 

 

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 色褪せた赤に塗られた、滑車のようなものが付けられたこの装置は、一体……?

 

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 炭鉱へ続く道に敷かれたレール。この道を使って、内部で採掘した金銀を運び出していたのでしょうか。

 

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 入り口から広がる闇は、外の光を遮っているかのようでした。当時は明かりも乏しかったでしょう、もっと暗くて恐ろしさもあったのかもしれません。

 いざ、足を踏み入れます。

 この日の外気温は20℃を欠ける程度の気温。厚着をして乗り込んだ私には少し暑いとも感じる陽気でしたが。

 炭鉱内は嘘のように、妙に冷え込んでいました。寒さに慣れているつもりの私も、思わず「寒っ」と口走った程です。

 

 

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 坑内には近代技術の走りとも言える、電気で動くトロッコ車両が点在していました。高さは腰程の大きさで、無骨ながらもどこか可愛らしさを感じさせています。

 そして驚くことに、この車両は充電式ということが直後に訪れた展示室で明らかになりました。

 現代のスマホのように、小型化高性能化されたものと程遠い充電機器。それが今の生活になくてはならない存在となった充電技術の礎となったことを思うと、感慨深いものを覚えました。

 

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 写真はカメラの師匠でもあるたーぼぅさんに教えを請い、撮影したものです。

 薄暗い照明。半ば汚泥かした地面。そして、冷たい岩の連続。幾ら近代化が進んでいた時代の産物と言えど、人肌が恋しいものだったのではないかと、一人思いに耽っていました。

 

 とても独りでは歩けない、な。

 

 肌寒さを感じ続けながら、炭鉱を後にするのでした。

 

 

 華々しさと負の一面を垣間見て

 

 華々しい歴史の跡地として語られる佐渡金山遺跡。ですがそこには、巨万の富と同時に儚く散っていった命の数々があることを、忘れてはいけないと思います。

 炭鉱内には発破した後や、酸素を取り入れる為に空けられた穴などが随所で見られましたが、逆に言えばその数だけ朽ちた人たちがあったということを物語っているとも言えるかと思います。

 炭鉱という狭く、暗い場所。限られた酸素を使い切り、酸欠で命を落とした人。

 発破時の計算ミスや予期せぬ落盤で崩壊し、巻き込まれ亡くなった人。

 厳しい労働に身体が参り、そのまま生きて地上に出ることもなく生涯を終えた人。

 

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 私は以前、世界遺産登録された富岡製糸場を見てきたことがあります。そこも機械に溢れ、務めた人たち……特にそこは女性について取り上げられることが多いです。

 然れど、貧富の格差による、今で言うイジメや劣悪な労働環境で身体を壊し、そのまま帰らぬ人となった方も多いと聞きます。

 

 華々しさの陰には、必ず犠牲や負の感情といったものが存在すると私は思っています。

 それが皮肉にも、輝かしく後世で認められるような存在となる支えになったとしても。

 

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 私は見た目の華やかさは勿論ながらも。そういった表舞台に出てこない、出せないような人たちのことについて目を向けなければならないと考えています。

 

 私の好きな言葉に、このようなものがあります。

 

 幸運を。死にゆく貴方に敬礼を。

 

 歴史の表に出てくることは、本当に氷山の一角であり、かつ内容も書き換えられた可能性も否定できません。

 そのようにして語り継がれてきた偉人たちよりも、私は寧ろ、影で支え繁栄の道の礎となった方々を思うと共に。

 心の底から、鎮魂と安寧を願うばかりです。

 

 

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 炭鉱の脇に咲く、秋桜の群生地。その花たちが、吹き抜けた風と共に一斉に揺れるのでした。

 

 

 今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 それでは、また次回まで。