白兎と雪狼の、果てなき旅路

ドライブやドライブや写真撮影を趣味とし、その他、HSPやAセクシャル、イジメ。精神的・心理的なことについて綴っていきます。

【ケモノ・小説】Tails Intersecting ~あとがきと補足②~

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 梅雨明け宣言が未だ出ないまま、夕暮れ時には雷を伴う激しい雨が降り注ぐ妙な天候が続いています。

 まるで台風の接近を思わせるような木々のざわめきを聞きながら、今年は例年と異なる天候を予期させる自然。

 コロナ、豪雨、地震。2020年に入って早くも半年が過ぎ去ろうとしている今でも、少しでも不安やストレスを軽減するような話題が未だにないことに不穏さを募らせている、【やさぐれ紳士】白兎です。

 

 

 皆さん、こんばんは。如何お過ごしでしょうか。

 

 

 前書きは程々に、前回書き切れなかった短編小説「Tails Intersecting」のあとがきと補足を、今回も綴って参ります。

 

 

 

 

 

 

 

 各話のサブタイトル

 

 

 「Tails Intersecting」には各話ごとサブタイトルを設けています。サブタイトルはそれぞれ、チェスの用語から引用しています。

 私はチェス自体をプレイしたことはありませんが、ルール自体には意味があったり興味深いものがあった為、それぞれの話に沿うような形でチョイスしております。

 前述した通り、当初は三話程度の構成を想定していました。

 最初の話はサブタイトル無し、トムソンガゼルが絡まれる場面は「Stalemate」、結びとなる最終話は「End Game」と決めていましたが、構想や話の繋がりを考えていく内に伸びに伸びて行きました……。

 

 ここでは、各話に付けたサブタイトルの本来の意味と、小説内の登場人物たちの行動や立ち振舞がどのように結びついているのかをご紹介します。

 

 

 ・第二話「Stalemate」

 Stalemateは将棋で言う「詰み」の状態ではないにも関わらず、次にいかなる手を打ったとしても詰みが確定してしまう状態にあることを指します。手駒を動かした瞬間詰んでしまうことからゲームの継続ができなくなってしまう為、純粋な王手やチェックメイトとは異なります。

 小説内では学園が謳う共存に対し、争いやいざこざが絶えない日常に辟易したトムソンガゼルがトラたち4匹の肉食獣に囲まれ、絶体絶命の状況に陥ります。しかしトムソンガゼルも必死に抗い、一方的に負けを認めようとしない姿勢が、トラたちの暴挙と対峙し場が動かなくなります。ここを互いに決定打となるものを出せない所を、打ち手無し、Stalemateをサブタイトルに付けることとしました。

 

・第三話「Promotion」

  Promotionはポーン(将棋の「歩」に当たる駒)が相手陣地の最奥に辿り着いた際、より強力な駒へと昇華するというルールです。将棋界では「成る」とほぼ同意です。

 小説内ではそれまで変わり者を通して異端児とされてきたホッキョクオオカミがトムソンガゼルを庇い、敵意を向けてくるトラたちにそれまで見せることのなかった黒い思いや言葉を突き刺すように放つ様を、ホッキョクオオカミの成り上がり、Promotionをサブタイトルとしました。

 

・第四話「Material Advantage」

 将棋と違って相手の駒を自駒とできないチェスにおいては、駒の数が相手より多いか少ないかが対局に置いて重要になってきます。厳密には駒の強さによって指標のようなものが伴いますが、その指標が多かったり単純に駒の数が相手よりも多い程、チェスでは有利に働くことが多分にあります。それをMaterial Advantageと呼びます。

 小説内ではトラたち四匹を相手にするホッキョクオオカミは数的には非常に不利な状況にあります。それでも己が信念を貫こうと奮戦する様は、数の暴力を気迫で覆そうとしていた。

 本来の意味とは逆の意味で、数の暴力に立ち向かうホッキョクオオカミの様を表そうと、サブタイトルとしてMaterial Advantageを付けることに至りました。

 

・第五話「En Passant」

 読みは「アンパッサン」で、チェスにおいてはポーン(歩兵)の特殊な動きのことを指す用語です。将棋の「歩」と同じ立ち位置にいながら、ポーンは相手の駒を取る時に、限定的ではありますがとても特徴的な動きをすることがあります。

 小説では浮世離れした言葉や振る舞いをしていたホッキョクオオカミが、ハイイロオオカミの決め付けに近い言葉を受けて豹変する様を描きました。

 普段とは異なる、限定的な場面での主人公の変わり様。それをサブタイトルのEn Passantに合わせる形でホッキョクオオカミの変化を表しました。

 

・第六話「Check」

 Checkは相手のキング(将棋の王将)を次の手で取れる状態を指します。王手と同義です。王手を効かせている相手の駒を逃がすか自分のキングを逃さなければ負けが確定してしまう、かなり追い込まれた状態です。

 小説内ではハイイロオオカミがホッキョクオオカミへ大きなダメージを与え重傷を負い追い込まれます。が、小柄さを活かした反撃で致命傷を逃れ戦闘継続状態を維持するに至りました。

 一時的とは言え、ホッキョクオオカミが逃げようのない窮地に陥った状態を鑑みてCheckのサブタイトルとして用いることとしました。

 

・第七話「Checkmate」

 Checkmateは完全にキングが取られる寸前の状態で、次にどのような手を打っても負けが確定してしまう「詰み」のことです。

 小説内では負傷したホッキョクオオカミとハイイロオオカミが下がり、代わりに出てきたトラとグリズリーが殴り合い寸前の喧嘩に入ります。

 互いを討ち倒す為に、クラスメイトに目を瞑らせる極限状態になる寸前、思いが噴出したトムソンガゼルが訴えかけるように強気の発言を行います。

 これによって一気にクラス中からの視線だけでなく殺意まで向けられてしまったトムソンガゼルが、「死んでも構わない」と終わりを覚悟した様から、Checkmateをサブタイトルとしました。

 

・第八話「Illegal Move」

 Illegal Moveとは反則となる駒の動かし方全般を指し、自分からキングを取らせるような打ち手を始め、本来動けないはずのマスへ駒を動かし方をするといったものまで様々なものが含まれます。

 小説内では一話目から姿を消していたアラスカンマラミュートが登場し、殺伐とした教室内を引っ掻き回すような言動を繰り広げます。元々型に嵌まることを嫌うアラスカンマラミュートの動きを、ルールを無視した動きを表すIllegal Moveに重ねました。

 

・第九話「Castling」

  Castlingはキングとルーク(将棋の飛車と同じ動きをする)と言う駒を同時に動かす特殊な手の打ち方を示します。チェスでは初期位置のキングは危険な為、このキャスリングを行うことで防御と同時に攻撃の幅を持たせるために使われる手法です。

 小説ではアラスカンマラミュートの力説だけでなく、ホッキョクオオカミがそれまでかたることのなかった過去を晒す場面になります。二匹が同時に、本来行わない言動や行動に移った様子になぞらえ、Castlingというサブタイトルを冠しました。

 

・第十話「An étude」

  An étudeはエチュードと読み、所謂詰み将棋と同じで勝ちに至るまでの手を学ぶことを意味します。別名ではエンドゲーム・スタディとも呼ばれます。

 小説内では分裂しかけていたクラス中が纏まり始め、争いの終局に向かって全員が意気投合し始めます。同じ方向を向き始めたとは言いつつ、少し疑念やさらなる解決策を模索している所を、An étudeの意味に重ねました。

 

・第十一話「Sacrifice」

 厳密にはチェス独自の用語ではありませんが、Sacrificeは犠牲という意味があります。

 小説では出し物の重役を自ら買って出たホッキョクオオカミ。それまでの行動からすれば自己犠牲にも見える様子を見せますが、ホッキョクオオカミは彼なりの思いや条件を隠すことなく提示し、意志を貫こうとします。

 自己顕示と自己犠牲の狭間。表に出そうとさえしなかったホッキョクオオカミの葛藤のようなものを、Sacrificeのサブタイトルで補うことを考えました。

 

・最終話「End Game」

  End Gameは文字通り、ゲームの終わりを意味します。

 最終的にクラス中が折り合いを付け、期限ギリギリで決まったクラスの出し物。いざこざや血を流す場面はありましたが、最後は傷を負った肉食獣であるホッキョクオオカミを、草食獣のトムソンガゼルが心を開き始めたところで幕を閉じます。

 ゲームではないにせよ、紆余曲折を経ながらも困難の一場面を乗り越えたことで褶曲を迎えたホッキョクオオカミたち。それをEnd Gameとして物語は終わりを迎えることとしました。

 

 

 

 今後の創作について

 

 

 

 十四話と当初申し上げましたが、よく数えたら一二話構成の小説となりました。

 一話がおよそ4000字前後でしたので、約5万字前後の物語となりました。

 頭の中で浮かんだ光景を、文字だけで起こすことは、やはり難しいことを痛感しました。表現力だけでなく言葉の言い回し、知っている単語の多さを如何に活用するか。同じ言葉を使い回すことだけは避けたかったので、何度も修正しました。

 

 ただ、書き続けることの苦痛さは感じることはありませんでした。そういう意味では、やはり文章を書くことは好きなようです。

 

 今の所次の創作物については考えておりませんが、機会があればTails Intersectingの後日談、或いは全く別物が思い浮かんだ折りには、今回のように上げていければと思っているのが、今の正直な感想です。

 

 長くなりましたが、第一作となる小説については、これで締めとしたいと思います。

 

 

 

 今回もご閲覧くださり、ありがとうございました。

 それでは、また次回まで。