吐く息も、日を追うごとに白くなってきました。
十三夜の月が綺麗に見える窓際に立ちながら、明日は更に着込まないといけないかなとため息を吐いている(現在6枚重ね着中の)、【やさぐれ紳士】白兎です。
皆さん、こんばんは。如何お過ごしでしょうか。
目的地が近づくに連れて、雨が上がると共に霧が立ち込めるようになっていく中。
今回の目的地である那須どうぶつ王国へ辿り着き、目的としていたオオカミを拝む瞬間が近付いて参りました。
その第一弾として、本記事を綴って参ります。
人にも、動物にも近づくことも怖がっていた私
本旅の目的地の那須どうぶつ王国。実は「国内 オオカミ」と検索するまで、存在すら知らない動物園でした。
幼少期は母に、祖父母に連れられ何度も赴いた動物園。
思えばその頃は怖がるものなど何もないという勢いで、動き回る動物たちを見て、吼えたり鳴いたりする彼らと同じようにキャッキャしていた記憶があります。
特に思い出深いのは、色鮮やかな羽を持つ孔雀でした。誇らしげにバサッと音を立てながら立派な羽根を広げる様を見て、見惚れるようにしながら興奮していた思い出が、今も瞼の裏に蘇ります。
しかし、歳を取り自我が芽生えていくに連れて、私はすっかり臆病になっていました。
元々飽く迄客観的に、遠くから見たり写真で見ることとは好きな私には、この目で、この身で動物たちと相見えることに対しては怖いという思いを抱えていました。
それが、それこそ紆余曲折を経ることで。
どれだけ偉大なヒトよりも、崇高とすら思えるようになったオオカミを、この目で見たい。写真では気高いながらも獰猛さを発する彼ら彼女らに、直接会いたい。
そんな思いを胸に秘めて訪れたのが、那須どうぶつ王国でした。
ホッキョクオオカミを、初めて展示し始めたその地に。
いよいよ、私たちは降り立ちました。
那須どうぶつ王国
この動物園はこれまで訪れたそれとは少し異なり、訪れる者には半屋内施設として、天気に左右されることなく園内を自由に行き来できる仕組み。反対に動物たちはそれぞれの特性や好みに応じた広い敷地に放し飼いされているという、珍しい造りをしていました。
私たちが到着した時間は小雨が降っていましたが、傘をお守り代わりに持ち歩く程度で済んだことは斬新的でありながら新鮮で、来園する者にとってとても有り難い計らいとも言えるものでした。
そのままチケット売り場へ直行、入園料を見て驚きました。
地元の動物園は、安い所で大人一人500円という場所もありましたが、まさかの2000円超えという高値。
入園料にしては都会のそれ並みか、少し高いかも……とすら思ってしまいました。
が、それも一瞬のことでした。
あらゆる動物が、自由奔放に行き交う光景を目の当たりにした瞬間。
お金が全てではないことを、すぐに理解することとなりました。
霧が舞う、海抜750mの動物園。私が住む地域よりも高い場所に位置する那須どうぶつ王国は、そのような矮小な思いを掻き消す魅力に溢れていることを、駐車場に愛車を止めた時には知る由もありませんでした。
ホッキョクオオカミが目の前に!が……
出入り口ゲートを通過し、私の欲求はすぐに行動となっていました。
考えるよりも先に、という言葉。私にとって、多分きっと、初めて味わう感覚だったのだと思います。
ホッキョクオオカミが飼育されているエリアを示す道を、高鳴る鼓動と思考が止まった、本能と共に。
北アメリカゾーン「オオカミの丘 Wolf hills」と名付けられたその場所。
昼過ぎ直後で人影も疎らなそこは。
オオカミでも自由に動き回れる、自然を最大限に模した、広々とした敷地。雨に濡れた芝や木々、艶めかしい色を放つ岩。
それだけでもため息が漏れる程でしたが、私は目を見開きながら眼前の景色を食い入るように見つめ続けていました。
この敷地に、私が追い求めてきたもの。
極寒の地、北極を気高く生きるホッキョクオオカミの姿を見る為に。
そして、敷地の端。小さく丸くなった、白い身体を見つけました。
い、いた。オオカミが、ホッキョクオオカミが。
この目で、遂に、遂に……!
しかしながら、雨降りの中少し寒くなっていたのでしょうか。身を丸めてウトウトしている様子でした。
あ、おはよう。とばかりに目を開きました。ですが、動こうという気配は感じられません。
寧ろ眠気眼というか、夢うつつといった様子でした。
これだけだと大きな白い犬の様にも見えてしまい、想像していた孤高で格好良いという印象が吹っ飛んでいました。逆に言えばオオカミと言っても、野生の動物。可愛い一面もあるんだ、と頬が緩んでしまいました。
奥にもう一匹いましたが、こちらも月曜日の朝を迎えて虚ろな目をする社会人のような、気怠げさを全開にしていました。
うん、これはこれで良い。良いんだけど……!
もっと活発に動く君たちの姿を、見せてほしい。
身勝手な思いと、彼らが敷地内を歩き回る様を拝めることを願いながら、一度この場を離れることにしました。
一度で駄目なら、何度でも。チャンスが来るまで、何度でも。しつこいと思われても、気持ち悪いと思われても、構わない。
推しの子たちを見るのであれば、唯では帰らない。
昔のように、簡単に諦める。潔いとも言えそうで、期待を簡単にゴミ箱へ捨ててしまうことは、もうなくなっていました。
適度な温度に保たれた温室内を自由に行き交い、伸び伸びと過ごす動物たち
次は熱帯地帯に生息する動物たちがいる、室内展示場に足を運びました。適度な温度と湿度に保たれたそこは、冷え切った外の世界とは無縁とも言えました。眼鏡がすぐに曇ってしまい、カメラのファインダーを覗くのにも一苦労でした。
こちらは臭い放屁を放つと悪い印象が根付いているスカンク。小動物というだけあり、機敏に動き回ります。たまたま給水するタイミングをお目にかかれたのですが、毛並みも綺麗でフワフワな印象でした。
ミミズクの子ども、恐らく兄弟でしょうか。寄り添って離れようとしない様は、仲の良さを連想させるには簡単なことでした。
小型でありながら、猛禽類。その目は鋭く、嘴と鉤爪は子どもながらも、夜の空を支配する者に相応しい。
「ん?誰、君たち?」
大きく見開かれた目は、幼さのような、あどけなさのような。大人への階段を登っている最中です、という様子のこの子たちを応援したくなりました。
「!!」
その時、二羽が同時に同じ方向を向きました。同調しているかのような様は、彼らの繋がりの強さを思わせるものがありました。
ゆっくり、大人になっていってね。
視線を移すと、敷地内はまだまだ多くの鳥たちが私たちを迎えてくれました。
他の動物園にもいることもある、ハシビロコウ。あまり動かずにじっとしている印象が強くありましたが、ここにいる子は比較的首を動かしたり動いたりと、割とアグレッシブでした。放ち飼いの環境が、やはり違うのでしょうか。
こちらはヒロハシサギ。頭の大きさに対して、大きな瞳が特徴です。
色艶やかな子がいました。熱帯地帯に生きる鳥ということで艶めいた青と紫の羽毛を持つこの子、実はオウギバトというハトの仲間だそうです。
大きさを二周り以上小さくした孔雀のようにも見える華やかさ。青という色は、それだけでもヒトを惹きつける魅力があるのかもしれません。
そして。
「やあ」
「いらっしゃい」
アビシニアンワシミミズクという、砂漠地帯に生息するミミズクのお出迎えです。
微動だにせず、真っ直ぐこちらを見据える様は、流石夜のハンターと言えば良いのでしょうか。
唯でさえ過酷な砂漠地帯に生まれ、飲水にも食べ物にもありつけるか難しいのに。
そのブレない瞳は、強さの現れなのか。
些細な変化で右往左往し騒ぎ立てることしかできない、私たちヒトと違って。
彼らはこの世に生まれた瞬間から、生きる強さと意志を持って、生きている。
そんな我々の弱さを貫くような、ひたすら真っすぐな目線でした。
室内の温かさと触れそうなまでの距離にいる動物たちと触れ合いほっこりした私たちは、次なるエリアへと足を運んでいきます。
そこは、さらなる喧騒と忙しさが広がっていました。
来園者の存在すら無視するように、走り回る影の正体は……。
次回、無双する影たち。
見えぬその影を、抜き去れ、Lupus。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
それでは、また次回まで。